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【不動産実務コラム】登記原因証明情報とは?内容・作成方法・費用負担まで徹底解説

【不動産実務コラム】登記原因証明情報とは?内容・作成方法・費用負担まで徹底解説

不動産の売買や相続で所有権移転登記を行う際、必ず必要になるのが「登記原因証明情報」です。
しかし、

  • 何を書く書類なのか
  • どのように作成するのか
  • 費用を売主と買主のどちらが負担するのか

といった点は意外と知られておらず、実務ではトラブルになりやすい部分です。

さらにこの登記原因証明情報は、関東と関西で費用負担の商慣習が異なるという特徴もあります。最近は他地域の買主・売主が取引に参加するケースも増えているため、この違いを理解しておかないと、決済直前に認識が食い違うこともあります。

この記事では、登記原因証明情報の基本から、作成の流れ、費用相場、そして地域による商習慣まで、実務に役立つポイントを分かりやすく整理して解説します。


■ 登記原因証明情報とは

登記原因証明情報とは、不動産の権利関係が「どのような原因で」「どういう経過で」変動したのかを証明する書面のことです。

たとえば売買であれば、次のような事実を記載します。

  • 売買契約を締結したこと
  • 代金の支払い・受領が行われたこと
  • 所有権移転の時点

いずれも、権利変動の根拠となる重要な要素です。
かつての「登記原因証書」と異なり、現在は法務局に提出して保管される形式となっています。


■ 作成方法:2つの形式

登記原因証明情報の作成方法には主に以下の2種類があります。

① 契約書等の既存書類を添付する方式

売買契約書や領収書など、契約に付随する書面をそのまま原因証明情報として提出する方法です。

ただし、売買価格や契約条件などが法務局に保管・閲覧される可能性があるため、実務では避けられることもあります。

② 報告形式(必要事項だけをまとめる方式)

契約書を提出したくない場合、権利変動の核心部分だけを整理して作成する形式です。
実務の現場では、この報告形式が最も一般的です。


■ 記載内容のポイント

登記原因証明情報には一般的に以下の項目を記載します。

  • 登記原因(売買・贈与・相続など)
  • 契約日または権利発生の年月日
  • 代金の支払日(売買の場合)
  • 所有権移転の時期
  • 売主・買主の住所・氏名
  • 物件の表示
  • 特約がある場合はその内容

司法書士が作成することが多いものの、内容は売主・買主双方に関わるため、事前にしっかり確認しておくことが大切です。


■ 作成費用の相場

登記原因証明情報の作成は、司法書士報酬の一部として扱われることが一般的で、目安としては以下のとおりです。

  • 1万円前後(税込)が相場
  • 書類取得費や立会費などが別途発生する場合もある
  • 複数筆や特約が多い場合、追加費用がかかることもある

費用そのものよりも、「誰が負担するのか?」が実務では重要なポイントになります。


■ 費用負担は“地域で違う”:関東と関西の慣習

登記原因証明情報の費用負担は、契約内容で決めることが原則ですが、実は地域によって慣習が異なります。

◆ 関東の慣習:買主負担

関東では、

所有権移転登記にかかる費用は原則として買主負担

という考え方が広く浸透しています。

そのため、原因証明情報の作成費用も、

  • 売主側の住所変更登記
  • 売主側の抵当権抹消

などの特殊な事情がない限り、買主負担となるケースが一般的です。

◆ 関西の慣習:売主負担

一方の関西では、

売渡に必要な書類の作成費用は売主負担

という商習慣があります。

つまり、原因証明情報(売渡証書に相当する書類)の作成費も、売主が負担することが多いのです。

◆ 慣習の違いがトラブルの原因に

特に近年は、

  • 関東の売主 × 関西の物件
  • 関西の買主 × 関東の物件

といった“地域を跨いだ取引”が増えており、

どこ方式で費用を負担するのか

が決済直前に問題化するケースが散見されます。


■ 誤解やトラブルを防ぐためのポイント

登記原因証明情報に関わるトラブルを避けるには、以下の点を必ず押さえておきましょう。

① 契約書で負担者を明確にする

「どの費用を、誰が負担するのか」は契約書で定めるべきです。
地域慣行に頼りすぎず、条文で明記しておくことで後のトラブルを防げます。

② 司法書士の見積りを確認する

原因証明情報作成料が明記されているか、実費・立会費・書類取得費の有無などを早めに確認しておくと安心です。

③ 契約書添付方式か報告方式かを確認

売買価格や特約が外部に知られたくない場合は、報告形式で作成するように司法書士へ依頼できます。

④ 売主側の住所変更や抵当権抹消の必要性を確認

売主側の別途登記が必要な場合、費用負担が増えることがあるため、事前チェックが重要です。


■ まとめ

  • 登記原因証明情報は、権利変動の経緯を証明する重要書類
  • 作成には司法書士報酬として1万円前後が必要
  • 作成形式は「契約書添付」または「報告形式」
  • 費用負担は地域慣習で異なる
    • 関東:買主が負担
    • 関西:売主が負担
  • 契約書で明記しないとトラブルになる可能性が高い

不動産取引を円滑に進めるためには、登記原因証明情報の扱いを正しく理解し、費用負担の認識を取引当事者で揃えておくことが重要です。


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