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景観法とは?宅建業者が知るべき条例との違いと実務対応

【不動産実務者必見】景観法とは?景観条例との違い・重要事項説明の範囲・規制の具体例を徹底解説

景観法と景観条例の違いと関係性

景観法は2004年に制定された国の法律で、美しい景観の形成を総合的かつ計画的に進めるための枠組みを定めています。一方、景観条例は各自治体が景観法に基づき、地域の実情に応じて定める「ローカルルール」です。

  • 景観法:景観計画区域や景観重要建造物など、法的枠組みを提供(国レベル)

  • 景観条例:具体的な建築規制やデザイン基準を設定(地方自治体レベル)

つまり、景観法が“骨組み”であり、景観条例が“中身”や“実行ルール”といえます。両者は独立した制度ではなく、景観条例は景観法に基づいて定められる補完的な存在です。

重要事項説明ではどこまで説明すべき?

宅地建物取引業法第35条に基づく重要事項説明では、「都市計画その他の法令に基づく制限」に該当するものについて、取引対象物件がそれらの制限の適用を受けるかどうかを明確に説明する義務があります。

景観法もこれに含まれるため、取引対象の土地が「景観計画区域」に指定されている場合、必ず説明が必要です。

さらに、次の点にも注意が必要です:

  • 景観条例に基づく具体的な制限内容(高さ制限、外壁色制限など)がある場合は、概要を示すべき

  • 建築許可の際に事前協議や届出が必要な場合は、その旨を明示

  • 将来的に景観区域の変更予定がある場合も、可能な限り説明するのが望ましい

とくに地方都市や観光地では、景観条例の運用が非常に厳格なケースが多いため、軽視は禁物です。

景観条例による規制の具体例

各自治体によって規制の中身は千差万別ですが、典型的な規制例を挙げてみましょう。

① 建築物の高さ制限

例:高さ10m以下、かつ2階建てまでに制限(古い町並みの保存地区など)

② 外壁・屋根の色指定

例:明度・彩度の上限を設定。白、茶、黒などの自然調に限定。

③ 屋外広告物の制限

例:看板のサイズや光源の有無、設置位置の規定(観光地での景観維持)

④ 屋根形状の指定

例:切妻屋根を基本とし、陸屋根や塔屋は禁止(伝統景観保全のため)

これらは条例上の“努力義務”ではなく、法的拘束力を持つ規制である点に注意が必要です。違反すると行政指導や、最悪の場合は是正命令・罰則の対象となります。

【事例紹介】三重県南伊勢町は町全域が景観区域

弊社で実際に取り扱った仲介案件の中で、三重県の南伊勢町が挙げられます。ここでは町全域が景観区域に指定されており、住宅の建築や看板設置などすべての行為に対して、景観条例に基づく届出や制限が課されます。

  • 建築物の高さが13メートルを超える新築・増改築・外観変更には届出義務がある

  • がけ地に面する敷地では、がけの高さの2倍以上の水平距離が必要

  • 太陽光発電施設の設置には事業概要書の提出が義務

  • 50kW以上の再エネ事業では住民説明会なども必要

このように、南伊勢町では景観・自然環境との調和を重視し、事前協議や届出が必須とされており、都市部とは異なる慎重な対応が求められます。

まとめ:景観規制は「確認」と「説明」の両輪で対応を

景観法や景観条例は一見マイナーに思われがちですが、取引後に「家が建てられない」「デザイン変更を強制された」といったトラブルの火種になる要素です。

したがって、不動産実務においては:

  • 景観区域かどうかを事前に確認する

  • 景観条例の内容を把握し、重要事項説明書に反映

  • 建築計画がある場合は、建築士や行政との事前協議を推奨

という対応が、クライアントへの信頼獲得とトラブル予防の観点からも欠かせません。


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