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GK-TKスキームとは?仕組みと税務上のパススルー課税の実務解説






GK-TKスキームとは?仕組みと税務上のパススルー課税の実務解説




GK-TKスキームとは?仕組みと税務上のパススルー課税の実務解説

最終更新日:2025年11月11日

不動産ファンドや再エネファンドで広く活用されるGK-TKスキームは、合同会社(GK)をSPCとして用い、投資家が匿名組合(TK)を通じて出資する枠組みです。
最大の特徴は、法人税基本通達14-1-3に基づく「ペイ・スルー(実質的パススルー)効果」により、GK段階での二重課税を回避しうる点にあります。

1. GK-TKスキームの基本構造

GK-TKスキームは、合同会社(GK: Godo Kaisha)を特別目的会社(SPC)として設立し、投資家が匿名組合(TK: Tokumei Kumiai)契約に基づいて出資するスキームです。GKは営業者として事業を運営し、TK出資者は資金提供者として事業成果に応じた分配を受けます。

不動産投資・再生可能エネルギー・インフラ投資などで採用例が多く、資金調達の柔軟性税務効率が主な採用理由です。

2. 合同会社(GK)の法人税課税の原則

合同会社は会社法上の法人であり、原則として法人税の課税対象です。日本では米国LLCのような構成員課税の完全なパススルー制度は認められていません。

そのため、GKが利益を留保すると、①GKに法人税②配当段階で投資家に課税という二重課税が生じ得ます。これを回避する手段として、次節の匿名組合契約が活用されます。

3. 匿名組合(TK)による二重課税の回避

(1)利益分配の損金算入

法人税基本通達14-1-3により、営業者であるGKは、TK出資者に対する利益分配額を損金算入できます。これにより、GKの課税所得が圧縮され、実質的にGK段階での課税を回避し得ます。

(2)ペイ・スルー(実質的パススルー)効果

GKの利益の大半を分配として損金処理することで、課税は投資家側に一本化されます。これがいわゆるペイ・スルーの効果です。

(3)匿名組合の非課税性

匿名組合自体は独立の課税主体ではありません。事業から生じた損益は匿名組合員に直接帰属し、契約は実質的にパススルー・エンティティとして機能します。

4. 投資家(匿名組合員)における課税

法人投資家

計算期間末日において、契約上分配を受けるべき金額を、実際の受領有無にかかわらず、当該事業年度の益金または損金に算入します。

個人投資家

匿名組合契約に基づく利益分配は、原則雑所得として取り扱われます(他所得との通算可否等は個別に確認が必要)。

5. 損失のパススルーと限界

GK-TKでは、利益のみならず損失も匿名組合員に帰属し得ます。もっとも、匿名組合員が損金算入できる損失額には、出資額を基礎とした上限などの制約が存在します。無制限の控除は認められません。

6. 実務での活用分野と留意点

  • 不動産ファンド(賃貸・開発)
  • 再生可能エネルギー(太陽光・風力・蓄電所)
  • 不特法3号・4号のプロ投資家向けスキーム
  • インフラ・データセンター・物流施設 等

留意点:匿名組合契約の内容やリスク分担に実体が乏しい場合、損金算入の否認リスクがあります。東京地裁(平成29年10月12日)・東京高裁(平成30年6月28日)の各判決でも、実体の欠如が問題となった事例が見られます。
スキーム設計では、法的構造・税務・実務運営の整合性を丁寧に担保しましょう。

7. まとめ

GK-TKスキームは、匿名組合契約に基づく利益分配の損金算入を通じて、GK段階での法人課税を実質回避しうる枠組みです。税務メリットを享受するためには、契約の実体・リスク分担・運営実務が整合的であることが不可欠です。法務と税務の両輪で精密に設計し、安定的な運用を目指しましょう。

※本記事は一般的な解説であり、個別案件の助言を目的とするものではありません。適用可否は税理士・弁護士等の専門家にご相談ください。

参考文献

  • 法人税基本通達14-1-3
  • 『不動産ファイナンスの法務と契約実務』
  • 『Q&Aでわかる業種別法務 不動産』
  • 『不動産の証券化に関する基礎知識』
  • 『会社法コンメンタール1 ― 総則・設立(1)』
  • 『ファイナンス法:金融法の基礎と先端金融取引のエッセンス』
  • 『再生可能エネルギー法務 改訂版』
  • 『FinTechビジネスと法25講:黎明期の今とこれから』
  • 『クラウドビジネスと法』
  • 『ファンド契約の実務Q&A 第3版』
  • 東京高等裁判所 平成30年6月28日判決(法人税更正処分取消等請求控訴事件)
  • 東京地方裁判所 平成29年10月12日判決(法人税更正処分取消等請求事件)




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